対談[2] スポーツライター:戸塚啓さん

【§2. 信頼できる人間関係が次のステージへと引き上げる】

◎人心掌握の秘訣を名監督に学ぶ

山本:言葉遣いとか、言葉の選び方とか、ビジネスの世界でもすごく通じるようなマネジメントが、サッカーの監督は究極じゃないですか。ファガーソンが、例えば、試合が負けたときに、選手の批判をしてないんですよね、実は。この時間に取られたことが最悪だとか、この時間に取られたことが良くない。やられたのには、誰か選手に、原因がある訳ですけど。

戸塚:個人を責めるんじゃなくて、現象をとらえるというか。



山本:事実、負けた要因はあるので、そこはしっかり言うんです。でも、個人を批判するということはしないですよね。点を入れられたシュートの局面もそうだけど、もっと遡ると取られたことが原因なのかもしれないし、ラストパスが出ちゃったことが原因なのかもしれない。それを、個人に帰結しないで、時間で表現したりするところが上手いなって、思いますね。

戸塚:例え時間なりで言われたとしても、当事者たる選手は当然、気づくわけですよね。

山本:活躍したときも、選手がこういう風(天狗)にならないように、例えば、久々に出た選手がすごいスーパーゴールで決勝点を挙げた時に、そのプレーのすごさを褒めてはいないんですよね。それまで、試合に出られないときから、この選手は本当に手を抜かないで、練習をキチっとこなしていたとか、素晴らしい練習態度だったとか。出ていなかったときからの、そういうところ(態度や姿勢とか)を褒める。頑張っている姿勢とか、努力してるところを褒める上手さというのは、ビジネスに繋がる話だと思うんですよね。

戸塚:そうなんでしょうね。そうやって褒めることによって、まだ試合に関われていない選手も、トレーニングの重要性に気づいたりするんでしょうね、きっと。

山本:サッカーを通しての話ではあるんですけど、サッカーを奥深く分析していくと、ビジネスで、人をマネジメントするみたいな話が山のように隠れていると思うんですよね。それを普通に、サッカーの監督はこなしていると思うんですよ。

 

◎監督業=中間管理職としてチームを牽引するリーダー

戸塚:山本さんがよく仰いますが、監督業って、色んな面がありますよね。色んな立場といいますか、色んな顔を使い分けなきゃいけないとかあるじゃないですか。

山本:メディア対策もそうですし、選手に話すときの言葉も違うし、上司である社長とかそういう人たちとコミュニケーションを取らなきゃいけないことも、普通にあるわけで。そういうところを上手く、対応していかなきゃいけないですよね。



戸塚:心理学的なアプローチとかもするわけですよね。

山本:自分はプレーするわけじゃないですからね。やるのは選手ですから。それはもう、リーダーとか、指導者的な立場で、会社の中でいったら、一つの部署の 部長くらいの仕事です。社長がいて、部長で、チームという部を任されているだけ。ただ、サッカーのチームですからね。勝たないといけないし、良いもの見せ ないといけないから、一番表に出るプレーはあるけど。そこのチーム部を扱っているだけの責任者ですよね、監督は。経営的に言えば、社長と相談した結果、こ んな何億もする選手、取れないよって言われるかもしれないし(笑)。




◎信頼関係が生み出す新たな情報発信の形

戸塚:せっかくの機会なんで、山本さんにお伺いしたいんですけど。こちら側がお話をこれだけ聞いても、使えるとこって部分的なんですよね。だから、おそらくはこういう経験もあるんじゃないかと思うんですけど。山本さんが伝えたいことと、こっち側が書きたいことが、必ずしも重ならないんじゃないかな、と。そういう歯がゆさは、おそらくあるんじゃないですか。

山本:それはありますね。もちろん、話した内容を選手も見たりするんで、ポジティブな話をしたいケースもあるんですけど、そうは書かれない時もあるし。

戸塚:ありますよね。

山本:そこはやっぱり、僕らの目線で言うと、信頼できる人には相当裏の話をしても、(表に)出しちゃいけないものは出さないで、しっかりと纏めてもらえるんで。信頼関係があれば、全部ホントのことを全部話しますけど。信頼関係がない取材に、本当のことは言えないですよね。

戸塚:最初からは言えないですよね。だから、こっちも考えますね。どれほどお話を聞いても、その全てを書ける取材って、まずないので、どこが一番、ご本人が言いたいところなのかなって。

山本:そういうのを積み上げていって、一つになれるみたいな感じなんでしょうね。そこって、信頼関係だと思うんですよね。積み上げとか。そういうのが、本当は商売になるように、すごい大きな仕事になるように、もしくは日本をリードしていくとか、心豊かな方向にもっていくようなことをしたいですね。もちろん、サッカーを通してですけど。そうなっていくように、していかなきゃいけないなと思うんですよね。多分、クラブが情報漏洩とか、メディア対応みたいなことを、規制ばっかりしていくと、そこはバランス良く成長できないと思うんですよね。今、練習見せないとか規制がすごくうるさくて。見せても良いじゃん、こんな練習と思うのを見せないとか。



戸塚:ありますね。

山本:練習を見せないと画もないし、写真もないし、書かれることもない。そういうことは、やっぱり一番もったいない感じがするんですよね。プロですからね。

戸塚:代表チームは、まさに今なんか、頭の15分しか練習が見られないということがかなり多いですからね。皆まで見せろとまでは言いませんけど。ある程度見せてもらってもそんなに、どうなんですかね、相手にそれが漏れるのかなって、ちょっと思いますけどね。



山本:FIFAなんかの大会にいくとね、できるだけ見せろ見せろって言われて。クローズできるのは、1回だとか、規制させれたりするわけですけど。

戸塚:どうなんですかね。

山本:日本の場合は、もう少し情報発信をしていかないと。ヨーロッパみたいに成熟しちゃっていればまた、話は別なんですけど。これからまだ、サッカー知らない人にも隅々まで理解してもらうためには、やっぱり露出というのは重要な視点だと思うんです。

戸塚:そうですね。僕自身も思うんですけど、日本の報道っていうのは、揺れ幅が大きくて。ある時は、監督を責める感情論にばかりに全体が走ったり。またあるときは、システム論ばかりに走ったりとかですね。もうちょっと大局的というか、中長期的な視点で見ていった方が良いんじゃないかって気もしますね。

山本:上手く、そこのレベルまでお互い上がって行かないといけないと思うんで。

戸塚:サッカーをやっていたといっても、やっぱり僕らの競技レベルは、現場で働いている方に比べれば、明らかに低い訳で。お話を通して、学ばせてもらっていることは沢山あるんですよね。聞いて学ぶというところで、我々の場合は少しずつレベルをあげさせてもらっているんじゃないかなって、気がしますね。間違いないと思います。

 

【§3. 注目する若年層の選手を見つけることでサッカーの見方は変わる】に続く

 

 

 

 

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