対談[1] 「プーマ」取締役:矢島さん

【§1. プーマとサッカー】

◎サッカーこそプーマの「ルーツ」

山本:日本のサッカーの育成に力を入れないと、強化にはつながっていかないと思っています。高校サッカーやジュニアとかの育成の方に力を入れていただいていますが、プーマの目指す姿をお伺いしたいのですが。

矢島:高校サッカーは2006年からサポートしていて、今回で8年になります。それ以前から、ジュニアユース、ジュニア年代という、その時点での将来を担う選手と言うことで、プーマとして色々とお手伝いしていました。主に、全国の高校チームを広く応援していた。その理由というも、プーマのブランドルーツの一つにサッカーがあるからです。プーマ自体が、サッカーを通して成長してきているのが大きいですね。ご存じのように、ペレ、クライフ、マラドーナ。

山本:順番で言うと、そうですね。

矢島:他にもマテウスとかね。

山本:象徴的なスターがいましたよね。我々の世代ではペレですね。

矢島:プーマとしては、幅広くいろんな選手と言うんじゃなくて、その時代時代のトップのものすごく特徴がある、パフォーマンスの高い選手に履いていただくというのがやり方です。今では、海外ではアグエロとかいますし、日本代表で言えば長谷部をはじめ、三浦カズ、川島といった選手たちをサポートしています。チームで言えば、やはり特徴的なチームという意味でイタリア代表ですとか。

山本:イタリア代表やってますね。

矢島:それからカメルーン、コートジボアール等をはじめとするアフリカのチーム。

山本:アフリカは、ほとんどですよね。2010年のワールドカップに出たアフリカのチームは全部プーマでしたよね。

矢島:1チーム、南アフリカを除いてね。

山本:南アフリカ以外全部ですか。クラブはどうですか?

矢島:クラブですか。クラブは、今年からボルシア・ドルトムントと契約しています。聞くところによると、観客動員数では世界一なんですよね。

山本:世界一なんですよね。すばらしい、サッカー専用のスタジアムで。

矢島:8万人のスタジアムが毎試合、いっぱいになるというんですよ。

山本:2006年のワールドカップの時に、日本代表がブラジル代表に負けたところですね。

矢島:このスタジアムですか。こんな角度の(手振りを交えながら)。

山本:はい、僕も中継で行っていたので、スタジアムに入っていたんですが、角度もすごいし、すごく見やすいですね。

矢島:去年もブンデスリーガーとドイツカップの両方を優勝している、名実共にビッグクラブと運良く、今年から長い契約をしたので、日本からも選手に行ってもらって、活躍してもらいたいと思います。香川選手いたときはすごく良かったです。日本からすると、日本人選手がいるといないで大きな違いがありますからね。

◎育成プログラムの拡充

山本:ドルトムントと言えば、今年12歳以下のスクールをやられたじゃないですか。僕も、視察に行かせていただいたんですが。子どもたちを、ドルトムントのコーチが映像を見せたり、実際にトレーニングを見てくれたり。こうしたオーガナイズは、プーマだからこそできたと思うのですが。

矢島:これはちょうどドルトムントと契約したということもあって、チームと話をして、特にジュニア世代の子どもたちに、ドルトムントのサッカーのプログラムやメソッドを披露してもらう。そのためには、2、3人のコーチが来て、何百人の前でやるというのではなくて、やはり実際に教えている合計8人のコーチに来てもらいました。

山本:8人の方に来てもらったんですか。

矢島:参加者はおよそ100名だったので、子どもたち12〜3人に1人のドイツのプロコーチがつくという形で、3日半のプログラムで実施しました。

山本:その間に、コーチングスクールもやっていらっしゃいましたよね。

矢島:これはレクチャー形式だったので、実践はありませんでしたが、200名程度のコーチの方を対象に実施しました。

山本:参加されたのは、プーマと契約しているチームの監督やコーチですか?

矢島:主にそうですね。我々はこうした形でやったんですが、非常に好評でした。

山本:ただ、子どもたちを実際に指導してもらうことに加えて、コーチたちもレクチャーしてもらえるというのは、プーマが目指している子どもたちを育てていきましょうという現場で子どもたち、それを育てるコーチたちを集めるというのは意味のあることだと思います。ドルトムントのコーチをこれだけの人数呼ぶというのは莫大なお金がかかる訳ですし、実際に触れあうチャンスもなかなかないので、そこの接点になっていただいているというのは、私たち指導者としても非常に大きなことだと思うんですよね。

矢島:ドルトムントの全面的な協力で出来たことで、来年もまたやることになると思います。今年の中身をアップして、コーチングクリニックも、実技を含めりなど、新しいアイディアを取り入れたいと思います。

山本:良いですね。是非。

矢島:教え方を含めて実施にしていきたいですね。

山本:たとえば、実際に指導の勉強に来られているのは、ユース、もしくは高校の先生方じゃないですか。だから、高校の先生方が実際に教えているレベルの選手、たとえばどこかの高校の選抜チームであるとか、高校選手権で上の方に行くようなチームだとかをデモンストレーションにやってもらえると非常にわかりやすいと思いますね。選手のレベルも見ることができるし、それが指導によってどう変化していくのか。どうバージョンアップしていくのか、非常に楽しみです。

矢島:今やっているのはジュニアなんで、小学6年生ですけど。コーチングスクール自体は、おっしゃるように中学生、高校生のコーチの人たちを対象にするというのは良いですね。ドルトムント自体はメソッドを持っているわけで披露してもらうというのを来年やりたいですね。東京だけでなく、関西方面でも来年は。

山本:今年は東京、横浜でやられたんで、あと関西で。

矢島:東京、関西だけでなく、その途中の静岡とか。

山本:出来れば、北海道から九州まで、皆様が集まりやすいところでやっていただけると良いんじゃないかと思いますね。

◎全国4,000校以上が目指す高校サッカー選手権大会の意義

山本:高校選手権の優秀選手の遠征など、すごくサポートしてくださっていますが。

矢島:これは、ご存じのように我々が高校サッカー選手権をサポートしているプログラムの一環に入っています。選抜、優秀選手をヨーロッパでの大会に参加しています。

山本:ベリンツォーナとドイツのデュッセルドロフの大会。

矢島:これもずっと続いているもので、高校生たちがヨーロッパで試合が出来るというのはすごく良い体験だと思うし、我々としてはそうした選手にプーマのシューズを履いてもらって活躍してもらって、その後もプーマを使ってもらえるようになれば良いなと思っています。

山本:今、全体の流れがクラブ、クラブということで、Jリーグのチーム方に選手を集めている中で、高校選手権のキャパシティの方が圧倒的に大きいわけじゃないですか。

矢島:そうですね。

山本:それをサポートしていただいているというのは、どうしてもJのクラブに注目が行きがちの中で、全体の4,000校を超す高校選手権を目指している学校に力をいれていただき、そうした子たちが海外で試合するチャンスをサポートしていただいているというのは、サッカー関係者からすると非常にありがたいことだと思っています。そういうのがあるんで、日本代表の選手をみると、ジュニアユースまではJのクラブにいても高校選手権を経由して来る選手が多ですよね。中村俊輔にしても、本田にしても、ジュニアユースではJのクラブにいても、ユースには行きたくても上がれなかった訳ですよね。

矢島:Jのクラブのユースには選ばれなかったんでしたね。

山本:そういう人たちが、星陵高校であったり、桐光学院であったり、高校に行って伸びてきて、長谷部なんかも藤枝東から高校選手権を通って出てきている。これからも、高校選手権の延長線上に日本代表がつながっているというのは、絶対見逃してはいけないと思うんですよね。

矢島:その通りだと思います。言われたように、全国の4,200校内外の学校のチームの選手が、そこから勝ち上がってくるのは、ものすごく経験上タフさがないと駄目でしょうね。

山本:うまいだけじゃなくて、良い選手になるためには、技術、戦術、体力的なことはもちろんなんですけど、強いメンタリティも絶対に必要なんです。なんでジュニアユースの時にクラブにいた本田や中村といった選手たちが、一回落とされたのに、高校選手権を目指して頑張ったことでプロ契約をして日本代表に繋がっている。

矢島:なるほど。

【§2. 高校サッカー選手権大会を語る】に続く

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