シドニー五輪組から現在の代表にも残っている世代が、川口能活や服部年宏たちだ。また97年ワールドユース組には中村俊輔や柳沢敦といった面々がいる。日本の成長が「世界を上回るスピードだ」と山本が断言できるのは、Jリーグ開幕前後のバ力騒ぎの中で、ひっそりと始まった世界挑戦への歴史があるからにほかならない。
写真解説:エースストライカーとしてゴールを量産した柳沢(右)。非凡な才能を見せつけた司令塔・中村。最近はちょっと疲れ気味?(左)。 PHOTO KISHIMOTO
「ひとつ歴史を作ると、“俺たちにもできるんじゃないか”という自信を次の世代にも与えます。そして、先輩の歴史を塗り変えたいと思う。これを繰り返していくことが大事だと思うんですね。92年のアジアユース1次予選を突破したときは、みんなで大泣きしましたよ。ところが最終予選で負けたので、“次こそ世界に出よう”という目標に切り替わったんです。それが現実となってベスト8まで行ってしまうと、その次の世代は予選を突破しても誰も泣かない。もう、 “行って当たり前”という感覚になってるんです。
アトランタ五輪の時もそうですよ。マレーシアの最終予選でサウジアラビアの怒涛の攻めをしのいで勝った瞬間、僕らは選手と一緒になって大泣きしたもんです。でも次のシド二ーになると、五輪出場を決めたからといって大泣きするような奴は一人もいない。99年のワールドユースになると、“俺ら優勝できるぜ” なんて話が、冗談じゃなくて本気で選手同士の会話に出てくるようなチームになっていました。
写真解説:すでにW杯出場も果たしていた若き天才MF小野(左)。高原はシドニー五輪でも活躍し、日本のエースストライカーに成長(右)。 Kaz Photography/PHOTO KISHIMOTO
今回のワールドユースも同じだと思いますよ。目標がどんどん高くなり、厳しい壁をいくつも乗り越えていかなければならない中で、また次の新しいタレントが出てくればいいんです。ワールドユースや五輪における予選りーグの一日一日と、決勝トーナメントに入ってからの一日一日とでは、重みや背負ってるプレッシャーが全然違います。大会期間中の生活をいかに冷静に過ごせるか、食事はちゃんと喉を通るのか、うまく気分を切り替えてリラックスできるのかとか、そういう経験は親善試合では味わえないものです。そうやって闘ってきた選手が上の代表にも繋がってきたのが、今の状況ですね。
僕はワールドユースがあったからアトランタやシドニーがあったと思いますし、その先のワールドカップがあったと思うんです。ワールドユースという真剣勝負の場は、選手を必ず成長させます。本当に大きな財産となります。5人ぐらいの交替が認められる親善試合が、全くの無意味とは言いませんよ。でも、真剣勝負よりもモチベーションは落ちますよね。特に今のサッカーは、終了直前に点が入るというケースがいっぱいあるんですよ。後半44分から、もしくはロスタイムに入ってからの闘い方をどうす
るのか。チームが本当に苦しい時に一歩でも前に足が出せるかどうか。そういう経験は、ああいう場に行かないとわからないんですよ。
トルシエ監督の性格を考えるとですね、その力があると判断されれば、今回のワールドユースのメンバーの中からフル代表に選ばれる選手が出てくるかもしれません。もしそうなったら、いま若いと言われている代表選手たちの尻にも火がつくでしょう。ワールドユースには、そういう底上げ効果も期待できるんです」
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