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2001年6月 SPORTS Yeah!(4)

4. 日本人の個性を生かしたスタイルとは何か?

山本が見つめてきた日本のサッカーは、世界の基準を目指して全力疾走し続けた8年間だった。しかし師匠と弟子の関係のように、その差が縮まれば縮まるほど、師匠から吸収するものが少なくなっていくのが物の道理だ。日本のサッカーは、まだ1人立ちしきれていない。

トルシエは言う。

「サッカーの60%はチームの戦術であり、ディシプリン(規律)である。だが選手たちが戦術にとらわれ、それをこなすことに神経とエネルギーの大半を集中している限りは、まだまだ本物とはいえない。戦術はあくまでもチームのべ−スであり、そこに30%以上の個人の想像力という上乗せがなければ、スペクタクルな攻撃は生まれないのだ」と。

彼が主張する「残リ30%の上乗せ」に、日本のサッカーが自立していく鍵がある。すなわち、オリジナリティーだ。

「言われたことを砕からはみ出さないようにきちっとやる選手よりも、自分から積極的にこうしたいんだと思って始める選手の方が成長しますよね。同じことをやっても、意識が違うからです。同じトレー二ングをするにも、意識してやってる奴は筋肉の付き方まで違ってきますから。

これは私見ですけど、チームの約束事が100あったとします。最低限、これだけはきちっとやってもらわないと困る。だけどそれで終わりというんじゃなくて、約束事なんていうものは、実際のゲームで発揮するパフォーマンスの50程度にすぎないんです。半分ですよ、本当に大事なのは。その上に自分の個性や特徴を乗っけてゆくことです。残リ50%の判断を、瞬間的にどう選択していくかです。

これからの日本のサッカーは、自分たちで積み上げていく時代になっていくんじゃないでしょうか。日本人の個性とか特徴を生かした日本だけのスタイルで世界に勝つために、今不足しているものを補強していかなきゃいけない。たとえば骨格の違う相手にコンタクトを受けると、どうしても下がってしまいますよね。でもボールを持ってる人には、相手も激しいコンタクトができないわけで、そういう状況でボールを持ちながら、しかも一人ひとりがボールを持つ時間を少なくしていく。そうすれば、相手にコンタクトする時間を与えませんからね。ただゴール前ではやっぱり厳しくなる。7メートル30センチのゴールマウスの中までボールを運ぶための強化も、やっぱり必要となってくるでしょう」

ユース世代の強化、活躍を通じて長足の進歩を遂げてきた日本のサッカーも、山本の目には、どうやらひと時代の終焉が見えてきているようだ。日本人による、日本人のための手作りサッカーに興奮できる日は、まだまだ遠い先の話になるだろう。それがファンタジーに溢れたポルトガル型になるのか、強烈なカウンターを仕掛けてくるイタリア型になるのか、今の段階では見えてこない。肝心なのは、選手一人ひとりの意識の高さだ。過去のユース世代強化の過程で、中田英寿という恰好のサンプルが生まれていることに、改めて感謝したい。

2001年6月 エンターテイメントスポーツ総合誌・SPORTS Yeah! No.20
(角川書店/サンケイスポーツ共同編集)P90〜P93掲載