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2012年3月10日 J1 仙台対鹿島@ユアスタ
仙台はたくましくなった。試合前、スタンドに「絆」という人文字が作られた。チームは震災以降、期待しているサポーターをがっかりさせないという誇りを持って戦ってきた。その強い気持ちが球際の厳しさ、粘り、ハードな守備につながって、昨季4位という結果を出した。東日本大震災をへて、つらい1年間を過ごすことで、ハートとプレーが一致して選手に根付いてきた感じがする。
今季から意識して高い位置からプレスをかけている。鹿島の前線の選手がアクションを起こして、揺さぶってくるシーンが少なかった影響もあるが、出しどころをなくした選手にいいタイミングでプレッシャーをかけることができていた。そのため、ダイヤモンドに陣取ったMF小笠原、本山らは後ろにパスを下げざるを得ないシーンが目立った。攻撃のテンポを作らせない効果的な守備が勝利の要因だ。
一年間を通じて選手1人ひとりもチームもたくましくなってきた。この日の試合からは迫力が伝わってきた。粘り強い守備が仙台のベースになってきたと言っていい。
2012年3月9日 ブラジルW杯アジア最終予選組み合わせ抽選
イラクは私が日本の指揮を執った04年アテネ五輪で4位になった選手が中心。当時、現地で準決勝のパラグアイ戦を観戦したが、球際の厳しさ、フィジカルコンタクトなどは世界でもかなりのレベルにあった。中心選手のマフムード、ムニールらは07年アジア杯V、09年コンフェデ杯などでも活躍し、そこからかなり経験値を上げ、タフさを増している。
アジアというより湾岸諸国独特の体系でかなり骨太。トルコに近いイメージだ。加えて、ムニールとダブルボランチを組むMFアクラムは4年前にイングランドのマンチェスターC移籍が内定していたが、就労ビザが取得できず白紙になったと聞いている。プレミアレベルの選手がいるという証しであり、あなどれない。
ジーコ監督はトルコのフェネルバフチェ監督を務めていたこともあり、体格の似た選手の特徴をつかんでいる。日本でやっていたサッカーとは全く違うスタイルだと思った方がいい。最も警戒しなければならないのは情報力。日本サッカー界でかなりの人脈をもっている。日本で報道されたことはもちろん、それ以上の情報をつかめるルートも持っている。決して楽観視することはできない。
2012年3月6日 ACL ブリスベーン対F東京@ブリスベーン
ポポヴィッチ新監督の目指すコンパクトで速いボール回しがよく出た。ボールを動かすテンポが良く、随所に出たワンタッチプレーが効果的だった。先制点のシーンは右サイドで相手のセンターバックと左サイドバックの間にボールが入り、DF徳永がそこに走り込み、スピードにのったままワンタッチでボールを入れた。それにより、ディフェンスラインが戻りながらの状況だったからこそ生まれた。MF谷沢の動きだしも速かった。これは思考のスピードが共通意識としてあるから。このテンポとスピードアップは本物だ。
追加点を挙げた長谷川は意欲的なプレーで、ゴールへの意識が非常に高い。集中力があり、例年より一皮むけ、ワンランクプレーの質と意識が上がっている。今年は楽しみだ。
初めてのACLで結果が出ると、選手、スタッフも一丸となって闘っていく雰囲気が作れる。アウェーのこの1勝はチームに好影響を与えるだろう。
2012年3月3日 富士ゼロックス・スーパー杯 柏対F東京@国立
F東京が非常にいい入り方をしたが、柏の最終ラインは駆け引きやラインコントロールを含めて安定していた。相手の出方を見極めてそこを耐え、少しずつ流れが見え始めたところで、MFレアンドロ・ドミンゲスが前を向き、仕事を始めた。多少押し込まれてもバランスを崩さず、どんな流れでも対応できる幅があった。攻守の切り替えの質は相変わらず高い。ボールを奪われても、効果的に相手の攻撃を遅らせることができる。この日先発したメンバーは昨年と変わっていないが、昨年J1の頂点に立った自信がチームを成熟させた。
ベンチには沢、工藤、水野、リカルド・ロボ、那須ら今季のACL参戦を見据えて層が厚くなっている。それがスタメンでいく選手にいい意味でプレッシャーをかけ、また、安心して最初からとばせる状況を作り出している。このことにより、チームに波がなくなる強みがある。残りの15分もバランスを崩さず、少ない人数でもカウンターで効果的に決定機を作り出した。地力が上がっている。間違いなく柏は今季の優勝争いの主役に名乗りを挙げるチームだ。
2012年3月1日付 J1順位予想
優勝候補の筆頭は柏。昨季優勝した自信と、中心選手が残り、ACL出場のための補強も的確だ。ベテランと若手の年齢層のバランスもいい。若い選手では酒井、工藤、茨田も育ってきた。カギとなるのは「序盤」。ACLを含めた過密日程の中で、チームをマネジメントできるかだ。
次に続くのは昨季とベースが変わらない名古屋。タレントもいて、チームも成熟。ケガ人が出ず、メンバーさえそろえば間違いなく優勝候補だ。
毎年上位争いをするG大阪は日本代表DF今野の補強により、攻守ともに安定感が出る。昨季は51失点。34試合でこの数字は多すぎる。これを10点減らすことができれば優勝が見えてくる。鹿島もFWジュニーニョが点以上取れれば面白い。
大型補強に成功した浦和は上位に進出するだろう。柏木、槙野ら広島時代にペトロヴィッチ監督の下でプレーした選手がいるのが強み。戦術がうまく浸透すれば、ポテンシャルがあるだけに十分上位に食い込んでいける。大宮、神戸もウイークポイントをきっちり補強した。面白い存在だ。
2012年2月5日 ロンドン五輪アジア最終予選 シリア対日本@アンマン
日本らしさが出ない一戦だった。シリアの怖さを考えるあまり、自分たちの武器を失った。後半30分以降はMF扇原の投入で、そこからリズムができ、ゲームを支配し始めた。だが、その時間は短かった。そういう戦い方をしようと思えばできるだけに、残念な一戦だった。
扇原はボランチの位置から効果的に縦へボールを入れることができる。セットプレーでもピンポイントのボールを蹴れる。11月のシリア戦でもDF浜田のゴールをアシストしたように正確無比な左足は相手の脅威だ。シリアの怖さを考えて、山村と山口のダブルボランチというチョイスだったと思う。だが、そのために武器を失ってしまった感じがする。
この年代はU―20などで世界大会に出場していない。逆にシリアは07年に韓国で行われたU―20W杯に出場し、経験を積んでいる。そういう自信がギリギリのところで出た。足を削ってでも戦うようなメンタルや姿勢が必要になってくる。日本は自分たちの手で足りないものを奪い返すしかない。
残り2戦。とにかく日本の良さを前面に押し出していくことだ。それが世界に通ずる道でもある。この苦しさを乗り越えていかなければいけない。
2012年1月1日 天皇杯決勝 F東京対京都@国立
京都はDF秋本が不在で本来はMFの安藤が不慣れなセンターバックに入った。その相手の弱点とも呼べるところをF東京のFWルーカスがついた。うまく起点を作り、ゴールにつなげた。ルーカスの相手の弱点を見極める目はさすがだ。来季は監督が交代するが、タレントはいる。FW平山らけが人が戻ってくれば競争力も出る。面白くなりそうだ。
2011年12月29日 天皇杯準決勝 C大阪対F東京@長居
F東京はC大阪の長所を消して試合をモノにした。レフティーの韓国代表MFキム・ボギョンに利き足とは逆の右足でボールを持たせるような守備のアプローチを徹底。日本代表MF清武には必ず2人がかりでチェックにいった。キムの左足、清武の右足を封じ、90分間相手のキーマンを自由にさせなかったことが勝因だ。
守備陣にはGK権田をはじめ、DF今野、徳永、森重ら日本代表クラスがズラリと並ぶ。今季のJ2では最少の22失点。その守備力は来季のJ1でも屈指だ。この日もきっちりキーマンをつぶし、改めてJ1で戦える守備の質の高さを見せつけた。
得点シーンはクサビを受けたFWルーカスのタメとMF谷沢の1タッチでのシュートが絶妙だった。特にルーカスは1タッチ目でターンするようなフェイントを見せた。そこでマークについていたDF上本の体重移動が遅れた分、谷沢のシュートコースに入るのが遅れた。素晴らしい決勝ゴールだったが、来季J1で優勝争いをするためには、攻撃陣は補強する必要がある。2ケタ得点を挙げられるストライカーが1人いれば、今季の柏のように昇格即Vも夢ではない。
2011年12月3日 J1 浦和対柏@埼玉
柏は右サイドバックの酒井が浦和MF原口の仕掛けを1人で止めたのが大きい。1対1でストップでき、センターバックの増嶋らがサイドに引っ張り出されない。酒井の成長が勝利につながった。
J2の昨季から大きな補強はなし。そのままJ1でも得点力が発揮された。カウンターをうまく使うことができ、セットプレーの武器もある。苦しくなると左の橋本、右の酒井からのクロスもあり、パターンを持っている。FWは若い田中、工藤らの成長で、北嶋、沢らも加えて、調子のいいFWを起用できる強みがある。それが後半の途中交代で試合を活性化できる要因だ。シーズン途中にはC大阪や磐田に大敗したが、それを次に引きずらず、連敗がない。ネルシーニョ監督のマネジメントのうまさもある。
来季はACLもあり、過密日程、時差や移動の問題もある。そこをどう乗り越えるか。今季のものを維持しようと思ったら勝てない。さらなる成長が必要だ。柏には今後、V争いがベースにできるだけのポテンシャルがある。
2011年3月8日付コラム「山本昌邦の世界基準」
日本代表のMF香川真司(ドルトムント)がなぜドイツで通用するか。その秘密は「3S」にある。「3S」とは3種類のスピードのことで(1)思考と判断(2)ボール(3)フィジカルだ。
(1)はいろいろなアイデア、意外性を瞬時に駆使して、相手の裏を突くこと。プレッシャーのかかる試合、練習になればなるほどその重要性が高まる。
(2)は1つはパス。サッカーは基本的にはパスゲーム。キックのスピードが速ければ、受けた人が余裕のある状況でプレーできる。もう1つは処理能力の速さだ。パスを受け、ワンタッチで処理できるところをツータッチすれば、自分もパスの受け手も相手からのプレッシャーが増える。
(3)は走る、止まる、方向を変える敏しょう性などのこと。緩急やターンのスピードなども大切。コンタクトプレーで相手よりも一瞬先に体を入れることも大事だ。
香川は身体的に恵まれているわけではない。だが、「3S」をミックスして自分の特徴を生かし、世界最強の組織的な守備を誇るといわれるブンデスリーガで渡り合っている。香川のプレーを見ればいかに3Sが重要か理解できるだろう。経験があるから余裕と自信がみなぎっている。厳しいプレッシャーの中で、それをハイプレッシャーと感じない良い習慣が身についている。
世界を目指す子どもたち、指導者は常に現場に行って、ピッチでスピード感を感じることが重要だ。それは教科書では学べないものだ。「世界との差」を詰めるために、「3S」は重要なキーワードとなるだろう。







