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広い視野を確保した後方の選手が前方の選手に指示を出すことで有効なプレーを作る

「後ろの声は神の声」の意味である。
チームを有機的に機能させるには広い視野を持った選手が効果的なコーチングを行う必要がある。
スピード化が図られ、一瞬にして状況が変化し、めまぐるしくゲームの流れが変わる現代サッカーにあっては、チームメイトに指示を出すコーチングのタイミングも重要な能力である。

年令に関係なく後方からの指示には従わなければならない。
そこに年功序列はありえない。

たとえ若いゴールキーパーであっても、ベテラン ディフェンダーに厳しい指示を出すことはごくあたりまえの事。それはチームを勝利に近づける為の大切な仕事であり、能力の一部なのです。

常に視野の不足を周り(視野の広い選手)からのタイミングのよい指示により補い、有効な動きを連動させていくことが求められている現代サッカー。
瞬時に変化する状況を正確に把握し指示する為に言葉の共通化なども必要ですし、何より次に起こり得る状況を予測できるだけの経験も積み上げていかなければなりません。

例えば、ディフェンスラインとGKの間に入ってくるハイスピードなクロスボールに対しては、自分が飛び出す、ディフェンダーに任せる、クリアする、ヘディ ングする…などの選択肢があるわけですが、状況に応じた最適な選択肢を瞬時に判断し、指示を出さなければなりません。机上で考えれば簡単なことでも状況が 瞬間的に変化する動きの中での判断は難しいものです。

広い視野を確保している選手が指示を出すことは理解できても、実戦で活かせるか否かは判断のスピードがカギを握りそうです。
このスピードを追求することが実戦で活きるトレーニングといえるでしょう。

組織力はチーム戦術と個々の創造力の調和である

現代社会では、要求されたことはパーフェクトにこなせる能力の高い人間が多い。要するに、言われたことはキチッとこなせる指示待ち人間タイプの増加である。

サッカーはチームスポーツであり、組織として力があり、ゲームの中でどう機能しているかが重要なのである。その為には、当然、個々の能力が高くなれば相乗効果により組織力も大きくなるので、個々の能力や創造力の高い選手をどう育てていくかという事が大切である。

試合の中で発揮されるパフォーマンスは、個人に置き換えた時に50%のチーム戦術と50%の個々の創造力(能力)に分けられる。チームから与えられてい る50%の戦術は、チームの基本的な決まりとして100%実行されなければならない。その上で、50%の個々の創造的なプレーを発揮する事が、チームの流 れに乗った個性的なプレーであり、価値の高いプレーである。
どんなに個々の能力が素晴らしいものであっても、チーム戦術を守れない選手はピッチに立つ事はできないのである。

個々人の創造力を育てる為に、答えだけを教える指導ではなく、個々の創造力、判断力というもの、要するに考える力を育てる事を優先した指導を今後もしていきたい。時間がかかる指導ではありますが、アテネの頂点からドイツへ選手を送り届ける為に・・・。

大きな可能性を勝ち取った中国戦(アジア大会)

プラス2試合の真剣勝負。計6試合の厳しい試合を勝ち取った中国戦は、経験と自信が不足しているチームにとっては大きな1勝であります。連戦の疲労などは 実際に経験した者にしかわからない。1試合のゲームでの疲れは、Jリーグでも充分経験する事は可能であるが、中1日、2日といったスケジュールでのコン ディショニングの難しさ、きつさというものは、公式の国際大会でないと追い込まれた状態にはならないので経験できないものです。  

サッカーはかけ算のスポーツです。1試合目10点、2試合目10点、3試合目10点、10×10×10=1000。1000点を持って戦った中国でゲー ムをおとせば、10×10×10×0=0 で、チームの評価は何もなかったでしょう。上にいけばいくほど、持ち点が多くなる分失うものも大きくなるので、 1試合の重みが増してきます。そのようなプレッシャーを乗り越える事が、次への自信になっていきます。ファイナリストにしかわからない重みがあったはずで す。  
結果を追求する中で、選手がどれだけ成長できたか。計り知れない。

通過点の銀メダル(アジア大会)

釜山アジア大会、ご声援ありがとうございます。 選手は、大きな自信を得て、たくましく成長しつつあると思います。親善試合では、味わえない厳しい戦いを、6試合フルに経験できた事は、アテネに向けて、大きな財産になります。
サッカーは瞬時に状況が変化する為に、常に様々な判断力が問われる難しいスポーツです。選手は、すぐに答えをほしがりますし、答えを教えることは簡単です。指示待ち人間が増えた現代社会では、このような傾向は顕著です。
9月中旬の磐田との「0対7」の試合では、これまで、多くの教育や海外遠征で得た物が通じるのか、また頭で答を知っていても、判断するのに時間がかかっ てしまっては、実際のゲームでは、生きてこない。レベルの高い厳しい相手との戦いの中で、個々の能力、判断力といったものを分析する為には、どうしても早 い段階でチェックしておきたい事でした。常に自分で考え判断し、素早く行動に移せる能力を、ピッチの中でも、外でも、育てていく必要があると考えていま す。様々な方法で、答えを教えるのではなく、考える力を育てるトレーニングやアドバイスを、していきたいと思います。そういう能力がワールドカップでは必 要なものだからです。

今回のアジア大会では、サポーティング、スタッフの多くが、ワールドカップで共に仕事をしたグループで、世界基準を熟知しており、それぞれの仕事は、も ちろん、選手の教育、環境作り、大会を戦い抜く為の経験、などがチームに大きな自信と余裕を与えてくれました。これら、チームを支えるスタッフのレベル アップ、ワールドクラスの経験が日本サッカーの財産になってきました。
これから更に大きな嵐に、遭遇するでしょうが、立ち向う準備は、アジア大会を通してできあがりました。

オープンスキルとクローズドスキル

子供はマネの天才ですから、コーチが見せたプレーをマネすることはすぐにできるようになるでしょう。その時、プレーのスピードは考慮する必要ありません。体が大きくなり、パワーがつけばスピードアップは可能になるからです。大切なのは正確にできることです。

判断を伴わないクローズドスキルは、ゴールデンエイジといわれる10~12歳(個人差はあります)の頃が学習に最適な時期です。この時期、神経系の発達が大人の90%以上に達しており、特に吸収力が高いので様々なスキルを習得するのに理想的です。
一度身についた技術は、神経回路が形成され、トレーニングを休んでも低下しないので、大人になってからも活かせる恒久的なものになります。是非ゴールデンエイジの、体のバランスがよい時期(第二次成長期前)に多くの技術を身につけてほしいと思います。

試合では、こうして身につけた技術を状況の変化に対応して、いかに適切なタイミングで駆使するか、またどの技術を用いるかといった判断力が問われます。この判断を伴う技術がオープンスキルです。
いかにしてクローズドスキルからオープンスキルへ移行させていくか、またどのようにして与える負荷を増していくか、といったことが指導者の重要なポイントとなります。

素晴らしい技術を持っているのにのに試合では…という選手にならない為に。
パスの強弱、タイミング、方向などはクローズドスキルでは判断する必要がありません。事前に決まっているからです。
どんなに優れた技術、能力を持っていても、正確に適切なタイミングで活用することができなければ宝の持ちぐされになってしまいます。
実戦で重要なのはオープンスキルであり、このレベルアップが重要なのです。

夢を追いかけて

ワールドカップを手にすることは、遠い道のりの果てにある誰もが夢見る目標です。しかし、追い求める夢があるということは本当に幸せなことです。一生をか けて追い求めた末に実現できるかもしれないし、叶わず夢のまま終わるのかもしれません。いつの日か日本代表がワールドカップを手にする為に、ひとつひとつ 新しい歴史を作り、その過程を大切にして、次の世代へと継承し活かして行くことが重要でしょう。本当に大きな価値ある夢です。選手は段階的に成長していく ものです。選手の成長なくしてチーム力の向上は図れませんから、長期的視野をもって逆算しながら、“いま何をすべきか”を考えていきたいと思います。高い 山に登れば、突然の風雨、希薄な酸素といった厳しい環境が待っています。悪条件下でもプレーの質を下げない事が重要になってきます。オリンピック、ワール ドカップは常に厳しい環境の中で行われる大会なのです。シーズンオフに行われる大会では、ベストなピッチコンディション、気象条件は望めません。

時間問題も含めて
2004年8月に行われるアテネに向けて、時差の問題も含めこれらの対策を十分に練っておくことは大きなアドバンテージになるでしょう。選手を育成する過 程においては、悪条件に負けないメンタリティが大切になります。フィジカルコンディションと共に、強いメンタリティは夢を実現する為の必要条件です。

みんなの力が1つにならないと、かなわぬ夢がある。

高い目標を達成する為には、周りの人々の協力なくしてたどり着けない事も多い。

ワールドカップでチャンピオンになるには、選手、スタッフなどチームだけの力では、無理だと思います。今回、本当にこの事実を体で感じられた事は今後の チームづくりの参考としていきたい。例えば、サポーターの力、サッカー協会、ボランテイアの方々、選手の家族、友人、恩師の先生、様々な方々がチームにそ して選手にパワーを与えてくれたように思います。苦しんでいる選手に、前へ進む力をくれた先生の存在など、大勢の皆さんに支えられていました。私自身もそ うです。日本の宝物である選手を預かっていましたが、彼らを育てた多くの指導者がいたわけで指導者を代表してワールドカップの間預かっていただけです。こ れら指導者の心が一つになったときのパワーはすごいことでしょう。

メデイアの方々には多いに感謝したい。それはまず、多くの情報とテレビを通して、新聞記事で、そして電話で直接、と日本での開催と言う事もあり、それぞれ の情報も沢山集まると客観性が出てきて正しい方向が見えてきます。感謝します。メデイアの方々の後ろには何千万人という視聴者がいるわけですから、是非正 しい分析をして頂いて、みんなの力が一つにまとまり、より高い視点でサッカーを分析していく方が増えれば、成長する為の我慢の時の難しさも理解される時が 来るでしょう。

日本のサポーターだけでなく、国民全体が一つになるくらいの環境が出来た時、世界の視点は見えてくるのだと思います。

代表チームとクラブチーム

Jリーグの発足と共に、日本サッカーが飛躍的にレベルアップしてきた事は、間違いない事実です。選手は、サッカーを中心にした生活が可能になり、集中して トレーニングに臨める環境が整いました。各クラブに世界のトップレベルのプレーヤーが加入し魅力ある試合が増加するとともに、サポーターも増加し、プレー ヤーはモチベーションを上げていきました。
クラブは魅力あるサッカーをし、常に4万人、5万人という観客がスタジアムを訪れれば、経営的にも安定し、必ずしも優勝しなくても、クラブ経営的には大きな問題はないかもしれません。(サポーターや選手は勝ちたいと想いますが)
各クラブのコーチやスタッフは、代表選手を育てる事で日本サッカーに貢献ができます。これは日本代表、日本サッカーにとって大きな仕事です。日本代表を 作っているのは、選手の成長という視点で見ていくと、各クラブのスタッフです。この様な代表とクラブのコミュニケーションが大切なのだと考えます。11人 の代表選手を育てたら、そのクラブのスタッフが代表スタッフになってもおかしくはないでしょう。

代表チームは、ワールドカップチャンピオンという高い頂点がある以上、常に上を目指して勝たなければなりません。
今回はベスト16でひき返す事になりましたが、そこまでの過程での1日1日には大きな価値がありました。この経験は大きな財産となりました。次は、また違う登山ルートになるかもわかりませんが、ワールドカップという山頂へ向かう時に必ずいきてきます。

代表とクラブの協力、連携を図れば日本サッカーの発展は間違いありません。

クラブで継続的に育てながら、代表へつなげてほしい。
クラブと代表チームの協力なくして、ワールドカップでの頂点にはたどり着けません。

クラブと共に世界を目指します。

日本代表コーチ兼五輪代表監督として

今日7月30日、日本代表コーチ兼五輪代表監督として、日本サッカー協会と契約致しました。
2004年8月に開催されるアテネオリンピック、2004年アジアカップ、2006年ドイツワールドカップなど、ビッグな大会で前回以上の成績を目標に新 しい歴史を作ります。特にオリンピックチームでは、監督として選手を育てながら結果を出し、本番での厳しい経験を1試合でも多くさせることで、2006年 ワールドカップでは30~40%の選手がオリンピックチームから押し上がるようにしていきたいと思います。

2002年ワールドカップでの勢いを大切にしながら充実した仕事をして、更なる日本サッカーのレベルに貢献していきます。世界に胸を張って、誇れる日本代表を目指します。

皆さんのご支援、よろしくお願い致します。
みんなの力が1つにならないと叶わぬ夢、それがワールドカップチャンピオンです。

歴史を作ったチーム、日本代表2002

サポーターの皆さん、代表チームへの大きく、力強い御支援、本当にありがとうございます。

2002年、ホストカントリーとしての記念すべきワールドカップで、皆さんと共に、初の勝点1、初勝利、決勝トーナメント進出という、新しい歴史を築き上げたことに、喜びと、誇りを持ちたいと思います。

このベスト16という結果は、我々が4年間で作り上げたものではなく、Jリーグの発足、ユース年代の世界レベルでの経験と結果、指導者の育成など、10年以上の努力と積み上げによってもたらされたものであり、日本サッカー界の勝利だと思います。
しかし、世界のサッカーの進歩は早く、我々が立ち止まっていたら、あっという間に追い越されてしまうでしょう。日本サッカーの目指す方向性は、間違っては いないということを実証できました。さらに成長の速度を上げながら、世界のトップレベルに肩を並べ、将来、ワールドカップ・トロフィーを手にするときがく るまで、走りつづけることが大切です。

選手個々には、95、97、99年、ワールドユースでのベスト8以上、96年アトランタオリンピック、2000年シドニーオリンピックと、国際大会で勝ち 越しており、今回のワールドカップの16強は満足できるものではなかったはずです。韓国がベスト4へ進出したことも含め、悔しい思いを胸に、次のワールド カップまでの1日1日を充実させて欲しいと思います。

個々がレベルアップして強くなれば、組織も大きく強くなり、ニッポンは強いチームになる。

選手1人1人が、自分の力を信じて、前へ進むことが重要です。
ワールドカップ・トロフィーを手にしている、大きな夢を持って・・・。