対談[1] 「アスルクラロ沼津」代表:山本浩義さん

【§1. 子どものポテンシャルを引き出す秘訣】

◎クラブだからこそ出来る、様々な世代間交流

昌邦:それでは、宜しくお願いします。

浩義:宜しくお願いします。

昌邦:子どもがゆとり世代になってきて、子どもの資質とか特性みたいなものが変化してきていると思います。2,000人を越すたくさんの子どもたちがこのクラブにはいるわけですが、子どもたちと接していくときや、触れ合うときに、気をつけているようなことがあれば、教えて欲しいんですが。

浩義:基本的に、子どもの質は、昔も今も大きくは変わらないと思っています。ただ、子どもたちを取り巻く環境が、ここ数十年で大きく変わったなと感じています。


昌邦:子どもが変わっているわけではなくて、環境が変わっているってことね。

浩義:環境が変わっている感じが強いですね。昔であれば、生活や遊びの中で培われてきたものが、今の時代ではなかなか学ぶことができない。そうした意味で、我々のようなクラブが、ある意味では社会に求められているという感じがしますね。スポーツクラブに来て、子どもたちが色々なスポーツに初めて触れる。そのときに接する指導者は、そのスポーツで最初に関わる人間なわけです。だからこそ、それを教える指導者の質っていうのは、すごく大事なものだと思います。

昌邦:核家族が多くなっている今、共働きの親も増えて、更に夜遅くに帰ってくるような家庭も多いと思います。必然的に、子どもが親から受ける刺激が、かなり少なくなってきています。そうした中で、定年退職された方をセカンドキャリアで雇用して、バスの運転手をやってもらう。そうすると、子どもからするとおじいちゃん、おばあちゃんの世代との付き合いが新たに生まれる。逆に、おじいちゃん、おばあちゃんみたいな世代のバスの運転手が、自分の孫と接するような感じで、他の子どもたちとも接してもらうことができる。そこには、これまでには無かった新たな刺激が生まれているんですよね。人間のコミュニケーションとして考えたときにはすごく重要な視点で、こうした取り組みはすごく良いことだと思うんですよね。

浩義:うちのクラブでもやっていますね。

昌邦:おじいちゃんがクラブの中に居るみたいなことだから。おじいちゃん役のバスの運転手が声を掛けてくれるし、挨拶もしてくれる。そうした形で子どもたちと接してもらえるっていうのは、すごく良い視点だと思うんだよね。


浩義:バスの運転手一人とってもそうですが、色んな世代の方と触れ合う機会がうちのクラブにはある。そういったことは、子どもたちの育成を行っていく上で、一つ利点になるものと言えると思います。

昌邦:学校じゃそれはできないから。クラブだからこそ、おじいちゃんもいる、お兄ちゃんもいる、お父さん、お母さんもいるという感じを作ることが出来る。クラブとして色んな世代の人と接するというのは、今の多くの家庭環境を考えても、増やしていってもらいたいことの一つだと思うよね。

◎大人こそが、子どもの成長を映す鏡

浩義: まぁ、そうですよね。ただ、その我々が子どもと接するときに、本当に気をつけていくこと。それは、指導者自身が、率先して子どもたちの良い手本にならなければならない、ということだと思います。

昌邦:指導者が見せていかないといけないし、子どもを含む回りはそう見ているということね。

浩義:そういうことですね。子どもが挨拶を出来ないとか、身嗜みもちゃんと出来ないというのは、指導している立場の人間が、まずは自分がダメだっていうことを感じないと。子どもがダメなのには、自分にも原因があるんだと。

昌邦:手本を子どもたちに見せるために、指導者たちがしっかりとしないといけない。

浩義:それが非常に大事なことではないでしょうか。

昌邦:それが子どもと触れ合うときに、最初の一歩としてクラブとして大事にしてきたことなんですね。

浩義:別にうちのクラブは、子どものときから、サッカーの選手とか、新体操の選手とか、テニスの選手を育てよう、というような思いが先にあるわけではありません。さっきも言ったように、子どもたちの環境が変わっている中で、昔の人は生活の中で身につけていた基本的なことが、 なかなか出来なくなっています。だからこそ、そうした動きづくりや体づくり、そしてコミュニケーションづくりなどに、主眼を置いています。競技スポーツもそうですが、基本を大事にやっていく、そしてやっていきたいというスタンスです。

昌邦:スポーツの専門的なことよりも、まずは子どもとしてあるべき運動能力、人間としての力。そうしたものを育てていくということですね。

浩義:昔は、そういうものを、お兄ちゃんや妹といった兄弟とのコミュニケーションであったり、近所の仲間と遊んだりすることで学べていました。つまり、遊びの中で運動能力が培われていったわけです。ですが、そうしたことが出来なくなっている。我々のクラブでは、昔は遊びの中で出来るようになっていた、動きづくりとかコミュニケーションづくりとかをやっていこうと。幼稚園の世代とか、小学校の低学年の世代では、そういった主観で運営していますね。

◎子どものポテンシャルを引き出すために気をつけたいこと

昌邦:そういう子どもたちの持っているポテンシャル、能力といったものを引き出すために、秘訣というかノウハウみたいなものがあれば、少し話してもらえればと思います。

浩義:4月生まれの子と3月生まれの子では、一年という時間の差があります。もちろん、物理的な時間の差は、成長にも差をつけます。その生まれ月による成長の差は、10歳くらいまで尾を引くと言われています。

昌邦:10歳で追いつく感じなんですね。

浩義:そうみたいです。

昌邦:4月と3月がね。私は、4月生まれだから、いつも何かが一番で、すごく有利で、気分良く生きてきちゃったっていうのがあるんだけどね。

浩義:そういうの、ありますよね。だから、我々が気をつけなければいけないのは、成長には個人差があるんだ、ということを常に考えておくことなんです。

昌邦:特にU-6、8、10世代はですね。

浩義:そうです。8歳、10歳くらいの年代は。そういったところを考えて接していかないとダメかな、と思ってますけどね。

昌邦:なるほど。その伸びしろを意識しながら、子どもと接していく。

浩義:なおかつ、褒められたり、成功したりした経験は、子どもたちを成長させていきます。だから、良いところを引き出していく。そして褒める。たくさんの成功経験を子どもたちに与えて、すごい、良かったぞと接していく。

昌邦:それが一つのコツですね。

浩義:一つのコツですね。

昌邦:子どもの能力でいうと、好きなことは熱中しやすいし、集中しやすいし。ご飯を食べるのも忘れて。だけど、否定的なことは、10歳以下の子どもたちは、まだ受け入れる脳になっていない。その辺りの心理学的なことをしっかり踏まえて、子どもたちにアプローチすると。コーチングスタッフたくさんいますけど、コーチングスタッフみんなが理解しているというのが、クラブの力だと思います。

浩義:それに加えて、言葉も決して威圧的にならないようにする。子どもの目線に立って、言葉も一つひとつ選びながら、話をしたりとか。


◎「つ」離れまでにやっておきたいこと

昌邦:しかり方やしつけの部分では、「つ」離れっていう言葉があるんです。一つから九つまでは「つ」が付くけど、十以上にはつかない。十つは、ないですよね。それで、10歳、11歳となっていく。九つまでに、つまり「つ」が離れるまでに、子どもたちのしつけをする。子どもたちに、良いものは良い、悪いものは悪いということを教えるのは、「つ」離れするまでにやりなさいということなんです。そのしかり方とか、しつけの部分で、まさにそうした「つ」離れ世代をずっと見ているというのは、非常に難しいことだと思う。だからこそ、そこのしかり方みたいなところで何かあれば、教えてもらえますか。

浩義:これは僕の個人的なことになってしまうかもしれませんが。ある程度ルール、例えば、社会のモラル的なものであるとか。例えば友達に石をぶつけるだとか、わざと蹴るとか。それはもう社会的にはダメなことであって、そういうことには厳しく怒る。でも、できる限り、何て言うんだろう、

昌邦:子どもの発想力とか、子どもの競争意識とか。

浩義:うん。

昌邦:そういうのは大事にしてやんなきゃいけない。絶対的に悪いものはしつけとして、ルールとしてダメなものはダメと言わないといけない。

浩義:そうですね。

昌邦:そこはしっかりと分けていかないと。個性を伸ばすところと、ルール上やっちゃいけないことや人間としてやっちゃいけないことは、しつけないといけない。そこは難しいところだよね。それが九つまでにと、一般的には言われている。

浩義:基本的には、「つ」離れ前の世代は、言ったことを直ぐ出来る世代ではありません。だからこそ、指導者としても待つというか、忍耐していくというか。そういうものが必要だと思うんです。粘り強く、子どもに分かりやすく話しかけていく。そして、しっかりと褒める。そういうことが、非常に大事なのではないでしょうか。

【§2. 見守ることこそが、子どもの成長に繋がる】に続く

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